合格が決まったからといって、遊ばせておくのは「もったいない」。だから生徒たちに「身の回りにあるもったいないを考えなさい。それがどうしたら解決できるかも考えてください」と課題を出したわけです。
AO入試では、試験の点数の結果で合否を判断するのとは異なり、受験生と学校が話し合いながら受験生の適正を見極めていきます。いわゆる学力的なものはわかりませんが、何度か面接することで人間としての魅力はわかるようになります。
↑ 写真:見学する芸工大の生徒と小山教授
それでは、人間の魅力とは何でしょうか? 僕が考えるには「4年間、この人と一緒に授業をやりたい」と思えるかどうか。これは、社員を採用するような感覚に近いでしょう。「いまは未熟なところはあるけれど、光る部分もある。鍛えればよくなりそうだ」と思ったら採用します。
中には非常に優秀な受験生もいますが、4年間一緒に学ぶのはどこか気が進まないなと直感的に思ったら、その子にとっては残念ですが、採用しないほうがいい。単純に僕の感覚的な好き嫌いです。
AO入試の面白いところは、「人間としての魅力」という数値化できない部分で生徒を選ぶところです。しかし、実際に面接で会ってもすぐにはわからない部分もあるので、そこの見極めが難しいところですが。
ちなみに、実際にAO入試で出した課題は、以下のものです。
課題1
自分の友人10名の氏名を記載し、それぞれの特徴やキャラクターに合ったキャッチコピーを考えてレポートしてください。
課題2
課題1であげた10名のうち、最も親しい関係にあると思われる友人1名を選び、2021年にその人物がどういう職業に就いているか、また自分がどういう職業に就いているかを想像し、2人がどのような付き合いをしているかを表現してください。課題1、2ともに文字や写真、イラストなど表現方法は自由。
こんな課題を出した目的は、受験生たちが自分の将来をどう思っているかがわかること。同時に、自分と関わる人たちの将来を予測する先見性の高さも、ひとつの才能だと僕は思ってます。
未来は自分1人では作っていくことはできない。人との関係性の中で自分がどう成長していくかを予測させることで、その受験生の性格が見えてくるのではないかと思いました。
相性や好き嫌いで学生を選ぶという発想は、学問の世界では異端かもしれません。でも、社会のいたるところで相性や好き嫌いといった理由でさまざまなモノが選ばれるケースはとても多い。
教育の世界でも企業の採用と同じように、教えたいと思う人を採ろうと考えてもいいのではないでしょうか。なにしろ、授業料をいただくわけですから、こちらはそれに見合うだけの価値を提供しないと親御さんのお金が「もったいない」。
どんなに小さなことでも「あの学校に行ってよかった」と思ってもらわなければいけない。そのとき、教える側と教わる側の相性は、4年後の満足度を大きく左右すると思います。
芸工大の生徒たち