パップンピットの種(8) 祈りの木 / 文・仁科幸子

もし、あなたの好きな葉っぱを一枚描いて、葉っぱの裏に、好きな
言葉を書いてくださいと言われたら、どんな言葉を書きますか?

 山梨県の小学校で、縦4メートル、横1,5メートルくらいの紙に、
『祈りの木』を作成した。私がスミの線で描いた木に、子どもたちが彩色、
一人一人、言葉の書かれた葉っぱの絵を描いて貼り、1本の木を全員で
完成させるのだ。

 子どもたちは、せっせと、好きな葉っぱを描き、言葉も書きあげた。
その葉っぱを、木の上に貼っていた時だ。灰色の葉っぱで、裏には何の言葉も
書かれていない葉っぱを発見した。
「この葉っぱは、誰の葉っぱ?」と聞くと、痩せた男の子がうなだれた
様子で進み出た。私は何気なく、「何か、地球や木にメッセージを書いて
あげてね」と言って、葉っぱを渡したが、結局その子は、時間内に葉っぱに
文字を書けなかった。担任の先生がその子に話をして欲しいと言う。

 そこで、「なんで、灰色で、葉っぱを塗ったの?」と聞くと、
「僕は、木なんて大嫌いだ」と子どもは、答えた。
「そうか・・・正直でいいね。確かに、誰もが木や花を好きとは限らないよね。
灰色のままでいいから、何か書きたい言葉はないの?」と聞くと、ないと
首を振っている。「みんなで作る木だから、君の葉っぱがないと完成
出来ないよ、何でもいいから好きな言葉を書いておいてね」と話した。

 次の日、その子は家で、新しい葉っぱを描いて持ってきたという。

 その葉っぱは緑色で、裏には、自然と書かれていたという。その子の家庭
環境は複雑で、心に余裕などない生活を送っていることを、後で知った。

 木も人間も生きる時間には限りがある。それなら自分が、まぶしく輝やく
葉っぱにならなきゃモッタイナイ。

 灰色の葉っぱを描いたその子も、いつか、美しい葉っぱを描く日が来て欲しい
と思った。『祈りの木』は、小学校の踊り場に、今も飾られている。

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   by mottainai-lab | 2010-11-30 13:59 | 仁科幸子 | Comments(8)
Commented by kokoa at 2010-12-01 10:43 x
灰色の葉っぱを書いたお友達を思うと、子供のころの自分を思い出しました。つらい家庭環境があっても学校で友達や先生と過ごせる時間が、あったことで精神的にも助けられていたと思います。
  みんなで 一本の木を完成させるのは、素敵な授業ですね。「君の葉っぱがないと完成できないよ。」と言われて、灰色の葉っぱから緑の葉っぱに変わったのではないでしょうか?
 自分の存在や気持ちを理解してくれる人がいることで、生きていける勇気になると思います。
Commented by りぼん at 2010-12-01 15:38 x
「そうか・・・正直でいいね。。。」仁科さんが男の子にかけた言葉が彼の心のドアを開きましたね♪自分のことを認めてくれる人がいることは、心の中に宿す美徳の種を発芽させる大きな力づけになります。今はまだ固い種でもあたたかい言葉や尊重する姿勢をいっぱい降り注げば、きっと芽が育っていくはず。生まれ持った数々のすてきな美徳を眠らせておくのはモッタイナイ。それには大人たちがまず出会う人たちの中から嫌なところを探すのではなく、宝探しが上手になるといいですね。
Commented by 三日月 at 2010-12-01 16:06 x
 木なんて大嫌い、と言った子が、家で葉っぱを緑に塗りそこに自然と書いたとき、何を思い、何を感じていたのでしょうか...
 木が大きく育っていくように、未来への限りない可能性を感じてくれていたらいいな、と思わずにいられません。
 地球を吹き抜けてきた風を受け、お日様の光を浴びて輝く葉っぱのように、どの子もキラキラ輝いてほしい...子供たちの描いた葉っぱを見てそんなことを思いました。
Commented by maki-kako at 2010-12-01 21:43 x
「まぶしく輝くはっぱにならなきゃモッタイナイ」
・・本当にそう思います。
でも、いくら輝きたくても、その場が与えられない環境にいる子どもが、きっとこの世界にはまだまだたくさんいるのだと感じてしまいました。

何をしても受け入れてくれるはずの親の前で、いい子にしてなくちゃ、と思ってばかりの子どもたち。
空想に耽る時間も持てず(知らず?)に、それこそ素敵な子どもの時間をモッタイナク過ごしている子どもたち。
あーなんてモッタイナイんでしょう。
でもそうしているのは大人なのかな?


灰色のはっぱの子も、みんなと作り上げた一本の木を見て、きっと穏やかな気持ちになれたと思います。
今は灰色の心、でもそういう時もあったなって思える日がきますように。
Commented by Amome at 2010-12-02 14:51 x
みんなで完成させた一本の木。本当に素敵です。木の傍で木の実を抱えたパップンピット。灰色で葉っぱを描いたお友達、自分の意志で緑色の葉っぱを描いたのだろうか?正直ちょっと気にかかります。灰色の葉っぱこそ、パップンピットに預けて元気にしてもらいたい、誰かにわかって欲しい心の種だと思うから、いつかこのお友達が自分から心の灰色の葉っぱや種を預けて心が楽になって、元気になって、思いっきり大きなキレイな葉っぱが描けるといいなと心から願っています。子供は皆の宝物。みんなで大切に育てましょう。
Commented by ビッグ・ムーン at 2010-12-03 12:11 x
他の子が生き生きと活動する中、うつむいて葉っぱを灰色でぬっている子どもの心情を思うと、つらくなります。
でも、どんな気持ちで緑の葉っぱを作ったかは、わからないけど、その子の緑の葉っぱが祈りの木を繁らせることができて、本当によかったと思います。
きっと、明るい気持ちでこれからその木を眺められると思います。
みんなの祈りが込められた木は、一人一人の心の中に優しい思い出となって残っていくと思います
 仁科先生は、どんな子どもの発言でも、すべて大切にして受け入れてくださいます。私たちが「そんなこと」と思うようなことでも。
だから、仁科先生の前では、こどもたちは自由に表現できます。
「すてきな絵本作家が、自分を受け容れてくれる」
この体験は、子どもたちにとって貴重な体験です。
Commented by haraママ at 2010-12-06 14:25 x
先日、子育てに関する素晴らしい講演会を聴く機会がありました。親として我が子の「ドリームメーカー」でありたいと、心から思える内容でした。そしてその後の座談会の中で、「どんなに忙しくても子供の声に耳を傾けなくてはいけない時がある。子供はサインを出している。そのサインを見逃してはいけない。」との話も聴きました。
灰色の葉っぱを描いた子供の気持ち。気付いて、話して、伝えた仁科先生は、まさにその子の「ドリームメーカー」ですね。

全てを当たり前だと過ごしている日々。でも本当は違うんだよね。当たり前のように呼吸できて、普通に生活できることがとても幸せなことなんだよね。つい忘れてしまいがちだけれど。。。

「祈りの木」すてきな授業ですね。子供たちが素直な気持ちをぶつけられますように。そして子供たちの夢がかないますように♪




Commented by ハニー at 2010-12-19 22:51 x
その人の心理状態を探るのに
絵を描かせてみる・・というのを聞いたことがあります。

つらいことや 苦しいことがあると
人の心から色がなくなってしまうなんて、なんか寂しいですネ・・。

灰色の葉っぱに込められた思い・・重いです。

「祈りの木」の作成のような創造的な授業、
先生が描かれている作品や、パップンピットさん達にふれることで
その子や 心の病んでいる人達に
少しずつでも あたたかな心の色が戻ってきたらいいなぁ~って思います。
  
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