梅仕事を終えてほっと一息。
毎年、梅でいろいろなものを作るけど、今年はひとつ、こんな失敗をしたんじゃよ。
梅のエキスを作るのは手間のかかる仕事でね、
100個ほどの青梅をひとつひとつすりおろして、
布でこして、しぼって、その汁を煮詰めていく。
すごく大変なんじゃ。
でも、すっている時も、汁をじゅわーっとしぼり出す時にも、
梅のさわやかな香りが広がって、清々と気持ちがいい。それが楽しみ。
梅の種としぼった後の実も、しょうゆにつけこんだり、
ごはんといっしょに炊いたりして、ちゃんといただくよ。
すりおろした実のしぼり汁は、土鍋に入れて、アクをとりながら、
とろとろとろとろ、ゆっくりゆっくり弱火で煮る。
あとは時々まぜるだけ。
と、ついそこで、読みかけの本を開いてしまった。
しばらくして、なにやらこげ臭い匂(にお)いに気づいて鍋を見ると……
真っ黒こげになっとった……。
残ったエキスは、ちっちゃいおさじ1杯分。
しかも、こげくさい。山盛りあった梅が、あんなに手間ひまかけて、
こんなになったかと思うと、もう情けなくて……。
最後のちょっとの油断から、もったいないことしちゃったよ。
煮上がる時はあっという間。気をつけよう。
この話をしたら、こう言われる。
「もったいないばあさんでもそんな失敗するんですね」
まあ私も、人間だからね。