そしてまだ、いくつか残された真っ黒な雨雲が、大忙しで空を流れて行く。
台風の後の、美しい不思議な景色だ。私は台風が去った次の日に、
台風の残した落としものを見つけに出るのが大好きだ。
以前は自転車に乗って、道になぎ倒された木々を見つけて横にどかしたり、
林の近くには小鳥が落ちていたりするので、助けたこともあった。
先日も、台風の次の朝に外に出て歩いてみた。
すると、風に吹き飛ばされた木々の細枝や葉っぱが、
道路に絵を描いたように散乱している。
そして少し歩くと、苔にびっちり覆われた岩肌がむき出しに続く道に出た。
山の水が、岩肌の上にちょろちょろとわき出ているのを見つけた。
道の脇に、岩の壁が15メートルくらいむき出しに続いている。
いつもは上に続く妙見山と呼ばれる小さな山に繋がり、
なんとなく岩肌がぬるっと湿った程度だ。
ところが今日は、元気にわき出した水がぽたぽたと
山から伝って落ちているのだ。
思わず岩肌に触ると、いつもよりぬるっとした水の冷たさが指を伝う。
「そうだ!」その時、昔この場所のことを、祖母から聴いたことがあるのを思い出した。
「イボやおできが出来たときには、ここの水をつければ直るんだよ」
昔の子どもは栄養不足だったからか、
手や足にイボや、うおのめや、タコなど出来た子どもがいっぱいいた。
そんな時に、この岩にしみ出ている水を薬代わりに塗ると直ると言って、
活用していたというのだ。きっと、この岩にはなんらかの薬効があるんだろう。
私もぺしゃぺしゃと手に塗ってみた。
自然は、人間に役立ついろんな薬を用意してくれているんだなぁ。
昔の人の知恵は、自然と密接に繋がっているね。
台風は、普段と違った景色や発見を置いていってくれた。
その落としもの・・・見つけないのは、モッタイナイ!