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<以下、本文>
箭:KIKIさん活動をみているとすべてそんな感じですよね。一貫しているというか。
そういえば、大学のときからモデルをやってるんですか?
K:大学からです。あと空間プロデューサーのアシスタントもやっていたことがあって、しばらく二足のわらじ状態でした。そこをやめてモデルや女優をやってます。これはラジオでも伺ったんですけど、箭内さんを見ていると、いまは「もったいない」や東京環境会議、東京スマートドライバーの仕事をやっているじゃないですか。
箭:あとは「マニフェストを読んで選挙に行こう。」という投票率を上げるキャンペーンの仕事もやってますよ。
K:そういったことに関わろうとしたきっかけは? やっぱり年齢も関係あるんですか?
箭:僕は40歳すぎてからですね。いまだに環境やエコとは全然興味がなくて。
(場内笑)。
K:じゃ、なんで参加してるんですか?
箭:うーん、どうしてなんですかね?
K:「もったいない」とかも。
箭:これは知り合いに頼まれて…。まったく意味がわからない、興味ないなと思った。でも、やっているうちに興味が出たら大発見だなと思いましたね。東京環境会議のときも小林武史さんに誘われて「なんで僕を誘ったんですか?」って聞いたら、「箭内君が僕といちばん正反対だからと感じて」と言われた。そもそも環境にたいして一生懸命やっている人が嫌いだったんですよ。なんか、偉そうな感じ、頭もよさそう、しかも金も持ってそうで。そうすると自分のことを考えるとどんどん惨めになってしまうというか。
K:遠い存在だった?
箭:そう、遠い存在ですね。例えばロハスとか。例えば、坂本龍一さんとかがやっていてもよくわからなかった。「すげーけど、俺には関係ないや」みたいなね。そういう人ってたくさんいるはずなんですけど、しかも置き去りにされている。興味をもっていない人に興味をもたせる方法を考えたら、自分の体を使って実験したくなった。それで何かヒントみたいなものを会得したら、僕の広告の仕事にめちゃめちゃプラスになるというか。興味のない人に興味を持たせるコツを学ぶわけだから。それで環境系の仕事に関わるようになったの。それが1つ。あとは40歳すぎると人生を折り返した感があって。
K:折り返した…。
箭:80歳まで生きるとしても、もう半分。その中で、人の役に立ってみたらどんな気分なんだろうって、突然興味がわいてきた。自分が何かをしたせいで、自殺を思いとどまったり、痴漢が減ったとか。たぶん広告の仕事の延長だと思ってるんですよ。自分がやろうとしているコミュニケーションが届いて行動に移るという、その実感を味わいたくなったというかありますね。「このお菓子おいしいよ」といって世の中の人が買ってくれることと同じレベルで興味がわいてきた。ラジオに出たときと違う答えしてませんか(笑)。
K:大丈夫です(笑)
箭:僕は「もったいない」というのをやって…。「もったいない」も嫌いだったんです。
K:「もったいない」と思われることが?
箭:そう。なんかおばあちゃんに怒られている感じがして。
K:「それしちゃ、もったいないよ」みたいに。
箭:ご飯粒を残すと、これはお百姓さんの結晶なんだ、みたいな。「もうウルセー!」と思ったりね。
K:(笑)
箭:僕は「もったいない」ということを考えていたら、例えば年末年始のカレンダー。
使うのは1つだけど、使わないものはゴミになってしまう。それって「もったいない」と。
「カレンダー作るのをやめましょう」と言うことはできるけど、面白い方法で解決できたら、めちゃくちゃクリエイティブな頭を開発できるんじゃないかって。
K:「カレンダーを作るのをやめましょう」と呼びかけるんじゃなくて、「別の方法を考えて楽しくやりましょう」と提案するわけですね。
箭:そうそう。ふだん広告のアイデアを考えているよりも、クリエイティビティーを刺激される瞬間だと思って。自分がクリエイティブになれる感覚のきっかけを「もったいない」が提供してくれるとしたら、これは参加してもいいかなと思ったんです。
K:「もったいない」か。意識しているとよく使ってる言葉ですよね。
箭:意外と使ってますね。CMだと、最近は永ちゃんが言ってましたね。「ブルーレイじゃないのはもったいない」って。
(会場笑)
K:ありましたね。
箭:佐藤浩市さんも「一番搾りじゃないともったいない」って言ってます。
K:流行なんでしょうか。
箭:流行もあるんと思うんですけど、みんな言いたくなってきたんじゃないでしょうか。流行ね。KIKIさんが「流行ですか」と言うと、冷たい感じしますね(笑)。
(場内笑)。
K:流行だとなんかイヤですよね。
箭:流行は嫌いでしょ?
K:うーん、どっちかというと。流行というとすぐ忘れ去られちゃいそうで。もっとしみ込んでいくほうがいいな。
箭:もう1つきっかけがあったのが、会社を辞めるときに「もったいない」と言われたことがあったんです。
K:会社を辞めちゃうのは「もったいない」と。
箭:そう。せっかく入った会社で、これからずっと給料もらえるのに、辞めるのは「もったいない」と言われた。自分は辞めないことのほうが「もったいない」と確信が持てたというか。辞めないことがつまらないんじゃないかって。
K:会社を辞めても、別の新しい体験ができますよね。
箭:そう。会社にいることで、別の可能性を消していることは「もったいない」と思ったんですよ。そのときに人が「もったいない」と感じることはそれぞれ違うって気付いた。
だから、いろんなことに「もったいない」と付けてみる実験をしてみようと。
K:実験?
箭:例えば、「ここにみんな集まるのはもったいない」じゃない。本当はここにいるよりは、やるべきことがあるかもしれないじゃないですか。
(場内笑)。
K:ほかの場所とかで(笑)。
箭:だけどここにこないと「もったいない」という考え方もあるし、すべての人にやさしくすることは「もったいない」という人や、その逆の人もいる。何を「もったいない」とするか、もったいなくないとするか、その人のスタイルで全然違ってくる。
K:すべてのことに両極端に付けられますね。
箭:そう、両極端ですね。確かに。
K:本当に人によって違いますね。
箭:違いますね。僕は、貯金があるのは「もったいない」と思うんですよ。
K:使わないのが「もったいない」というか。
箭:使うのが「もったいない」という人もいるでしょ。死ぬ瞬間に貯金が残っていたら、負けだと思いますよ。
(場内笑)
K:負けですか(笑)。
箭:すべての貯金を使い終わって死ぬって、すごい難しいことなんじゃないかって。それをなんとか実現したいと思ってやり続けてますけどね。
K:ちょうど使い切る?
箭:ちょうどよりも、使い過ぎ?
K:それはある意味、借金を残して死なないと「もったいない」というか。
箭:そう、まさにそうですよね(笑)。
K:いいのかな(笑)。
箭:だから「もったいない」って面白いなと思ったんです。そういう意味で。「もったいない」は環境のことを考える活動なのかなと思ったら、実は違う。
K:違いますね。
箭:YES、NOのアンケートでも、「お互い興味がわかない合コン」とかあるじゃないですか。これって環境となんら関係ない(笑)。でも、これ「もったいない」と思う人が74.4%もいるわけですよ。
K:そうなんだ(笑)。
箭:だから、「もったいない」はそういうことでいいと思うんですよ。
K:よく考えると楽しいですね。
箭:「もったいない」を考えることって楽しいですよ。
K:そうですね。