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インタビュー:黒田監督 /アニメーションの監督と言う仕事

アニメーション監督・黒田昌郎さんにスタッフがインタビューさせて頂き、
アニメにまつわる楽しいお話を色々とお聞きしました。
その内容を数回に分けてご紹介しています。

第2回目の今回は、アニメーションの監督って
具体的に何をするのか?
お聞きしました。

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■ アニメーションの監督って具体的に何をするんですか?

実写映画の場合、撮影現場はスタッフ、キャストの全ての人たちが、集まって、監督の指示のもとに撮影が行われます。その現場では、監督は作品内容も含めて、現場の作業を円滑に進めるための管理者でもあるのです。時には人事管理も行うこともあります。演劇の舞台監督は、当日の舞台の進行の全て、そして本番に至る迄の稽古スケジュール、スタッフ、キャストの人事管理も兼ねる役を果たしています。作品の内容の提示をするのは演出です。監督と演出の違いは、そんなところです。当時日本の映画の最高責任者は監督でした。アニメーションの場合は演出と呼ばれていました。

つまりは、アニメーションの場合、人事やスケジュールの管理はノータッチでした。現場では実写とは異なり、スタッフは分散しているので管理の仕様がありません。最近、アニメーションでも監督と呼ばれるようになっているのは、まずは映画の場合、実写と合わせようと考えたのだと思います。またTVのシリーズの場合、週一本放映のため各話別々の演出が担当するようになり、そのため全話をまとめる人が必要になり、監督という肩書きの監修者が置かれるようになったのです。

監督や演出が何をするかというと、作品を作る流れで言うと、先ずは企画。企画がOKになり、制作開始のGOがかかると、現場ではプロデューサーが動き出します。監督の決定、そしてシナリオライターの人選。時にはこの二人は企画の段階で既に決まっていることもあります。同時に、キャラクターデザイン美術監督を決めていきます。これも場合によっては、企画書の中にキャラクター、美術のサンプルを入れなければならないので、先行して決めれられる場合もあります。

特に、キャラクターは、実写の場合の俳優と同じ役割ですので、作品のカラーにも大きな影響を与えます。シナリオ、キャラクター、舞台画面スタイルの検討が一斉にスタートします。ストーリー、キャラクターの性格、画面の美的要素をどうするか?監督は全てのイメージをまとめることになります。

イメージが固まったところで、仕上がったストーリーをどのような画面に作っていくかの全体の指示プランを作ります。それが「絵コンテ」です。映画はいくつものcut(カット)が積み重なって構成されます。例えば、long shot、full shot、upなど、サイズを変えたり、アングルを変えたり、写すキャラクターを変えたカットをつないで作ります。監督は、絵コンテをカット毎にどんなサイズで画面の中で誰がどんな演技をして、どんなセリフを喋るのかということを決めて、絵にしていきます。長い映画の場合、このカットが1000ぐらいになります。絵コンテ用紙が300枚ぐらいになることもあります。

実写と決定的に違うところです。実写では全員が撮影現場に集まり、用意!スタート!で撮ります。カットの号令で1カット撮り終えたことになります。アニメーションは何百人ものスタッフが別々な場所で作業をします。原画・動画を描いて、線をデジタル化して、着色して背景を描いて、着色したキャラと背景を合わせて撮影してやっと1カットの画面が出来上がります。長い場合は1つのカットが出来上がるのに何ヶ月もかかります。カット毎に、多くのスタッフが、それぞれの作業を同時進行ですすめていきます。そのためには詳細に指示の書かれた絵コンテが必要になるのです。実写の場合は字コンテといって、絵のない、カット割りの指示とカット内の演技プラン、照明などの注文の入ったものを書く監督さんが多いのですが、アニメーションは基本が絵なので絵コンテになる訳です。

構図(angle、size)を決め、その画面の中での動きプランを描く訳ですが、私はあまり、絵が上手ではありません。正直言って、私の下手な絵を作画のスタッフが「こういうふうに描いて欲しいんだよ」とイメージを汲み取ってくれるので、救われました。今更、絵が上手になるように頑張るより、絵は上手な専門家にお願いしよう。僕はその代わりに何が出来るか?を考えました。絵描きさんの絵、動画をより効果的に見せるためにどうしたら役立てるかを考えた時、自分の演出としての立ち位置というか、そんなものが見えてきたといえます。
多くの戯曲、小説、演劇、映画を読み、観まくったおかげでドラマツルギーといえば大げさですが、作品全体の設計図の中でどう見せるか…その演出的な技法を勉強しました。絵の描けない演出にとってはそれが自分の役割だという開き直りです。
   by mottainai-lab | 2012-01-19 14:33 | 黒田昌郎 | Comments(0)
  
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