「日本の景気が悪い」ということは、周知の事実だ。ニュースや新聞で会社の倒産や解雇などの話題をよく目にする。しかし、繁華街に出てみると買い物客が多く、ショーウィンドウには商品が山ほど陳列されている。だから、景気の善し悪しがいまひとつわかりにくい。とはいえ、この国がどれだけ恵まれているかは、さまざまな国に行くとよくわかる。
日本は体の調子が悪ければ病院に行ける環境があり、健康診断も受けられる。地球上の大半の国では、お金持ちは病院に行けるけど、そうじゃない人は病院にすら行けない。日本では、基本的にみんなが病院に行ける。医療制度についてはいろんな批判はあるけれど、海外と比較するととても恵まれている。
教育も医療と近いところがある。義務教育ということは、全員が学校に行けること。ところが、ネパールでは多くの子どもたちは学校にすら行けないのだ。登山前に地元の人たちと交流することがよくあるが、子どもたちがみんな僕の持っているペンをくれという。次に紙が欲しいという。
話を聞くと、子どもたちは勉強がしたいらしく、文字を書きたい、絵を描きたいという。普段は地面にチョークで書いたりしている。それを紙とペンで書きたいというのだ。彼らは字が読めないのに、落ちている新聞を見ながら見よう見まねで楽しそうに書く。
経済的な理由で学校にいけない、勉強ができないといった環境の中にいる子どもたちにとって、勉強ができるということがものすごくうれしいことなのだ。
いろんな国にいってみると、日本はとても恵まれていることがわかる。それが当たり前と考えると大事なものを失ってしまうような気がする。言い換えれば、恵まれた環境ということは、チャンスがいっぱいあるという意味もあると思う。
4月は進学や就職といった新しい環境に進む人が多いと思います。新しい環境をチャンスだと思って頑張ってください。